或る夜に。
見限られた野良猫が、虚しく爪を研ぐ。
反抗かう機会などあれど
見せぬままのか弱い爪を。
過ぎさることで、乗り切ろうとする度に
積もるばかりの苛立ちと憂鬱に
いつか鉢合わせるのもわかりつつ
今はまだその時ではないと
繰り返す言葉に魂などない。
或る夜に
思い出すばかり。
栄光の日と
最悪の日を。
そのどちらでもなく
そのどちらもない
今は過ぎ去るばかりで
形さえ絵描けない。
右手にもったブラシには
絵空事を描くキャンバスがない。
或る夜に。
猫が居た。